1sin Anonymous jacket

1sin

日本アルプスに連なる岐阜県の飛騨高山に日本で唯一の刺し子専門店「飛騨さしこ」があります。
一般的に刺し子は東北地方の伝統技術として有名ですが、
東北地方同様に厳しい環境の飛騨高山でも独自の発展を遂げてきました。
刺し子は、江戸時代に東北地方では寒冷地のために木綿が育たず、寒さをしのぐために薄い麻の着物を重ねて生地を厚くし、そこに糸を刺すことで暖かさや丈夫さを確保する手段としてはじまったとされています。
それが日本人の美への意識と手先の器用さが相まって江戸時代末期にはひとつの文化の域にまで達しました。
起源をさかのぼると飛鳥から奈良時代、布をつづり合わせて僧たちによってつくられた「刺納袈裟」に始まるとされています。
しかし洋服の普及にともない刺し子も徐々に忘れられていきました。

明治の近代化に伴い一度は衰退した刺し子の文化ですが、1920年後半から柳宗悦氏を中心として興ったの民藝運動により「用の美」として刺し子も再認知される様になりました。
用の美(用即美)とは実用性の中の美しさ。
使い込まれた物や、用途に徹してつくられた物には無駄が削ぎ落されて美が宿るという考えです。

飛騨さしこは1960年頃から高山の地で半世紀に渡って刺し子業を営んでいます。
この道30年以上の職人を筆頭に、素晴らしい腕を持った職人の手によりつくり出される刺し子には、これまで有名デザイナーからのオファーが何件もあったそうですがすべて断ってきたそうです。
今回はじめてのパートナーとして1sinを選んでいただきました。

記念すべき第一着はジャケットを仕立てました。
「Anonymous Jacket」(Anonymousとは“名もない”“匿名”などの意味があります)。
生地は色々な柄の「かすり」などの生地を集めました。
生地の柄に合わせて職人の感性で刺し子を施し大きな一枚の生地に仕立て上げます。
すべてが一点ものになります。
この刺し子は飛騨さしこでも熟練の職人にしかできない技術です。
そのため「Anonymous Jacket」は1着をつくるのに約2ヶ月がかかります。
刺し子は職人のその日の体調や感性によって様々な表情を見せるとても繊細な仕事です。

手間ひまを存分にかけてつくられた1着ですので価格も安くはありません。
ですが、刺し子は長い時間をかけて持ち主の身体に馴染んでいきます。
途中新たに刺し子を加えることも可能です。
そうして“世界で1着”が“あなたの一着”に育っていきます。

20世紀は「大量生産・大量消費」が隆盛を極めた時代でしたが
これからは「モノの本質的な価値」が再び問われる時代になると考えます。
1sinではファッションを通じて新しい価値観の創造に取り組んでいきたいと考えています。

※「Anonymous Jacket」は1着だけ代官山のセレクトショップ「O」にて販売しております。
また実物をご覧いただきたい方がいらっしゃいましたら
info@1sin.netまでご連絡いただければサンプルをお見せすることもできます。